陳情の賛成討論

今回の6月定例会には多くの陳情が提出されていました。その中で陳情第18号≪「教育基本法」・「学校教育法」の改正、「学習指導要領」の全面改訂に基づいた教科書採択がされるよう教育委員会への意見書の提出を求める陳情書≫について、会派を代表して賛成討論をさせていただきました。誤解が無いようにはじめにお伝えしておきますが、この陳情は決して特定の教科書を支持するよう訴えるものではありません。法改正の内容に沿った形での採用が行なわれるように依願するものでした。陳情の全文を載せるとボリュームが多すぎますので、私の賛成討論の内容を掲載します。これで概ね内容をご理解いただけると思います。

 

≪陳情第18号≫ 採択 ≪賛成討論≫

「教育基本法」・「学校教育法」の改正、「学習指導要領」の全面改訂に基づいた教科書採択がされるよう教育委員会への意見書の提出を求める陳情書

につきまして、市政会を代表して賛成討論をさせていただきます。

 

⇒ 教育現場において、事実を知る権利がある子どもたちに対して、より適格な教材を採択することは必須の作業であります。採択に関わる教科書は全て検定を通った教科書といえども、細かく検証していけば内容には大きな差があり、子どもたちの等しく学ぶ権利を侵害が発生することが危惧されます。それゆえに採択にあたっては、「前回の踏襲」という選択から一歩踏み出すことを期待するものであり、新しい学習指導要領の目標とする項目にしたがって細かく比較され、その内容が保護者を含め広く納得されるべきものであります。

 

今回の陳情の内容はとりわけ「社会科の教科書について限定されたものではない」ですが、あえて内容に踏み込むと、たとえば公民の教科書で言えば、今回検定を通った教科書は7社あり、現行教科書の8社から3社が無くなり2社が新たに加わるなど変更になっています。無くなった3社も現行の検定は通ったものであり、利用してきた学校もあります。このような変化がある中で、教科書は常に細かく内容を比較検討されるべきものであり、それぞれの教科書について公平に審査されるべきであります。

 

例を挙げれば「学校教育法」第21条に掲げる「義務教育の目標」の中に第2項4「家族と家庭の役割、生活に必要な衣食住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと」とありますが、今回の教科書では7社中3社が単元から「家族論」が消えています。昭和53年使用版では8社平均で20頁半が家族論にあてられていたが、現行版では平均3頁弱と減ってはいるものの全教科書単元として扱っていました。先ほどの学校教育法の目標に掲げている中で今回はさらに減少させ、7社中3社しか扱わないというものは、陳情者が心配している内容が十分に理解できます。

さらに、平成18年に改正された「教育基本法」の第2条で「公共の精神」と「我が国の郷土を愛する」ということが教育の目標と設定されました。それゆえに当然ながら各社公民教科書には、これらの内容が説かれることが期待されていましたが、これについて詳しく説いているのは1社しかありません。また、竹島・尖閣に関する記述でも触れていない教科書もあり、触れていてもコラムにおいて「日本海に位置する竹島については、日本と韓国の間に領有をめぐって主張に相違があり、未解決の問題となっています。また、東シナ海に位置する諸島については、中国もその領有を主張しています」と記載しているものまであります。どちらも「日本固有の領土」であることは明らかであり、領土問題は存在していないというのが正しい認識の中で、これは中立の立場というよりも、韓国・中国の主張の代弁とも取れるものであり、こういったものも検定を通っている事実がある以上、子どもたちが等しく学ぶ権利が守られるよう、教科書採択は「前回の踏襲」という選択から一歩踏み出すことを期待するものである。

 

また、あえて「陳情者の本意ではない」かもしれないが、歴史の教科書に踏み込むと、現在使用している2006年度版を細かく比較した「元文化庁長官三浦朱門氏」の資料によるとさらに同じ検定を通った教科書にも大きな違いがあることが明確で、これは今年度採択される教科書においても同じ流れが踏襲されています。比較をすれば違いは明確になりますが、比較するにあたっては基準が大切です。学習指導要領の目標である「国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を、その時代や地域との関連において理解させ、尊重する態度を育てる」、「歴史上の人物に対する生徒の興味・関心を育てる指導に努めるとともに、それぞれの人物が果たした役割や生き方などについて時代的背景と関連付けて考察させるようにすること」という部分に焦点を当てて「歴史上の人物をどの程度取り上げているか」を見てみると、一番多く取り上げている教科書は歴史上の人物を263人取り上げているが、一番少ない教科書では154人しか取り上げていません。さらに取り上げ方で比較すると、1ページ以上のコラムや人物を詳しく解説しているものから、本文中に名前が羅列されているだけのものまであるが、人物を解説している数が多い教科書は90人であるのに対し、少ない教科書は47人にとどまります。またどのような人物について詳しく解説しているかについては、ある教科書では「伊藤博文、織田信長、聖徳太子、神武天皇、津田梅子、徳川家康、豊臣秀吉、二宮尊徳、源頼朝、紫式部」のといった誰もが知っている歴史上の人物11人ですが、別の教科書では詳しく解説しているのは「竹崎季長(たけさきすえなが)」1人だけや「中江兆民(なかえちょうみん)」1人だけなどになっています。これらの教科書でどのような人物が取り上げられているかというと「アテルイ、シャクシャイン、柳宗悦(やなぎむねよし)、李舜臣(リシュンシン)」などで、「日本の将来を背負って立つ中学生に、日本の歴史上の人物を差し置いてこうした人物を教えることにいささか疑問を感じる」という三浦氏の声もうなずけるものがあります。

したがって内容について、新学習指導要領に掲げる目標に沿って各論を比較するなかで、このような明確な根拠を持って採択が進められることを期待する声が、決して小さくないことを発信することは重要であると考えます。

 

このような事実を踏まえて各自治体の議会は、採択に関わる教育委員の承認権者として、「教育基本法」・「学校教育法」の改正、「学習指導要領」の全面改訂が遵守されるかを見届けるべきである。また今議会でこの陳情が決議されることによってPTAをはじめとする地域住民も、子弟の教育に教科書がいかに重要な役割を持つかに思いをいたし、教育委員会の教科書採択に大きな関心を持って見守ることが大切である。

 

あわせてすでにこれに関連する請願・陳情は、「茨城県議会」「京都府議会」「宮城県議会」「京都市議会」などで採択されている内容であり、本議会においても県教育委員会、市教育委員会に当てて、しかるべきメッセージを送るものとして採択を希望するものとして賛成討論といたします。

 

以上が賛成討論の全文です。私は正論だと思うのですが、残念ながら市議会では賛成少数で「不採択」となりました。